i'm missing bits and pieces from the pages that you took


本の好きな文章を書き出しているノートが溜まってきたので、少し載せるだけの記事。心に引っかかったものいくつか、













「告白すればいいのに。伝えてからでも遅くないよ」

「いいの。本当は、告白する勇気なんてなかったから」

「だって、私と田島くんじゃランクが違うでしょ」

「人間にランクなんてないよ」

「夏川さんには分からないかもね。夏川さんみたいなタイプの人は、何をしても許されるから」

「そんなことないよ」

「そんなことあるって。ほら、例えば、友達とか」

「友達が人間のランクに関係あるの?」

「大ありだよ。夏川さんはきっと、誰かに話し掛ける時に劣等感に襲われたりしないでしょ?自分なんかがこの子と話していいかとか、周りにどう思われるかなんて、気にもしてない。だから、誰のことも下の名前で呼べて、気軽に話し掛けられる」

「変なこと言うね。理央ちゃんは誰かと話すときに周りを気にするの?」

「気にするよ。嫌われてないかとか、馬鹿にされないかとか、ずっと気にしてる」


「その日、朱音は空を飛んだ」/武田綾乃









思考を止めるコツを習得していてよかった。食べて、吐く。わたしを不安にさせるものすべてを便器に流し去り、忘れて、馬鹿になる。


「滅びの前のシャングリラ」/凪良ゆう










ふと、植物の間引きを思い出す。生長するためには、失わなくてはならないものがある。それがどれだけ辛くても。一方で、そんなに苦しいのなら、生長なんてしなくてもいいんじゃないかとも思ってしまう。


「オルタネート」/加藤シゲアキ









〇〇だから××、という健やかな論理は、その健やかさを保ったまま、やがて鮮やかに反転する。

「満たされてないから他人を攻撃する」「こんな漫画を読んでいたから人を殺した」はやがて、「満たされている自分は、他人を攻撃しない側の人間だ」「あんな漫画を読んでいない自分は、罪を犯さない側の人間だ」に反転する。おかしいのはあの人で、正しいのは自分。私たちはいつだって、そんな分断を横たえたい。健やかな論理に則って、安心したいし納得したい。


「どうしても生きてる」/朝井リョウ








いつだって少しだけ死にたいように、きっかけなんてなくたって消え失せられるように、いつだって少しだけ生きていたい自分がいる。きっかけなんてなくたって暴力的に誰かを大切に想いたい自分がいる。

「どうしても生きてる」/朝井リョウ









「もう、卑屈になるのも飽きたから」

飽きた。

もう、卑屈になるのにすっかり飽きたのだ。


「正欲」/朝井リョウ








終わるのだ、と思う。こんなにもかわいくて凄まじくて愛おしいのに、終わる。

先ほどの興奮で痙攣するように蠢いていた内臓がひとつずつ凍りついていき、背骨にまでそれが浸透してくると、やめてくれ、と思った。やめてくれ、何度も、何度も思った、何に対してかはわからない。やめてくれ、あたしから背骨を奪わないでくれ。推しがいなくなったらあたしは本当に、生きていけなくなる。あたしはあたしをあたしだと認められなくなる。

さみしかった。耐えがたいさみしさに膝が震えた。


「推し、燃ゆ」/宇佐見りん








「いま、来てて偉いって言った」

「ん」

「生きてて偉い、って聞こえた一瞬」

「それも偉い」

「推しは命にかかわるからね」


「推し、燃ゆ」/宇佐見りん











(今日のタイトル: the book of you & I/Alec Benjamin)