今年の夏に朝井リョウさんのエッセイ第三弾が発売されるそう、朝井さんのエッセイは本当に面白くて、いつ読んでも声出して笑っちゃうほどなので、めちゃくちゃ楽しみ。小説も大ファンだし、唯一全作品読んでる作家さんだと思う。去年からちょいちょい前観た映画を観直したり、前読んだ本を読み返したりしてるけど、朝井さんの本も久々に読み返すとやっぱり良くて、特に20代前半あたりに書いた青春群像劇系のお話は、切なくてぎゅんとなる中にトゲもあって最高。とにかく朝井さんの表現は好きなものが多すぎるので、今日は私の特に好きな文章を抜粋して紹介します。新年の読書のお供にぜひ、
打ち合わせとかワークショップとか演出家の人脈とか、それらしい言葉を使ってるだけじゃ何にもなれないんだって。そんなところを誰かに見てもらいたいと思ってるうちは、絶対、何にもなれないんだって。
「何者」
沙奈はきっと、これからずっとああいう価値観で生きていくんだろうな、と思った。
(中略)ダサいかダサくないかでとりあえず人をふるいにかけて、ランク付けして、目立ったモン勝ちで、そういうふうにしか考えられないんだろうな。だけどお前だってそうだろうが、と夕陽に長く伸びる自分の影を見て思った。
「桐島、部活やめるってよ」
楽しすぎる瞬間は、真っただ中にいるとなぜだか泣きたい気持ちになる。両手では抱えきれないこの幸福は、早く過ぎてしまって思い出になってほしいと思う。
(燃えるスカートのあの子)
「もういちど生まれる」
「愛子は、CD売って、いろんな人たちを悩ませてる。自分はCDだけが欲しいのか、握手だけしたいのか、どっちもいらなかったのか、どっちもほしかったのか、何回握手すれば満足するのか、どれだけ握手しても満足しないのか、音楽が好きなのか、アイドルが好きなのか、どんな売り方だと許せないのか…自分がどんなヤツかって、いろんな人に考えさせてるだろ。それってすげえなって俺は思うよ」
「武道館」
テレビ画面が、CMに変わる。何の前触れもなく。
それくらいの滑らかさで、何もかもぶっ壊れればいいのにな、と思う。
初めて死亡者のアカウントを特定できたときに感じたのは、自分でも驚くくらいの安心感だった。人がいなくなることに前触れなんて何もない、という、健やかさからかけ離れた論理を視覚的に実感できたとき、いつだってずっと少しだけ死にたいような自分に暖かい毛布を被せてもらえたような気持ちになった。
(健やかな論理)
「どうしても生きてる」
自殺の方法を一度も調べたことのない人の人生は、どんな季節で溢れているのだろう。
生まれ持ったものに疑問を抱くことなく生きていられる人たちの目に、この世界はどんなふうに映っているのだろう。
「正欲」
恋心とか片思いとか、そういう甘い思いじゃない。もっともっと辛くて、苦くて、憧れて、憎くて、焦って、もう二度と味わいたくないような思いを、私は尚樹に対して何度も感じてきた。
(屋上は青)
「少女は卒業しない」
「好きでした、先生」
好きでした。ずっと前から、言いたかった。
先生は驚いたようすもなく、やっぱり眉を下げて微笑んだ。
「ありがとう、作田さん」
私の中にある思いは、過去形でしか伝えられない。自分で小さくピリオドを打ちこんだあとでないと、伝えられない。
(中略)
好きでした。過去形にして無理やりせりふを終わらせればやっと、エンドロールが始まってくれる。
(エンドロールが始まる)
「少女は卒業しない」
(今日のタイトル: notice/LAVE)
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