最近読んだ本と観たドラマの紹介を。多少のネタバレを含むので、いやな方はささっとスクロールしてください。
今日読み終わったばかりの本、西加奈子さんの『夜が明ける』。今年の本屋大賞にもノミネートされている一作。
(あらすじ)
15歳の時、高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。普通の家庭で育った「俺」と、母親にネグレクトされていた吃音のアキは、共有できることなんて何一つないのに、互いにかけがえのない存在になっていった。
大学卒業後、「俺」はテレビ制作会社に就職し、アキは劇団に所属する。しかし、焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、少しずつ、俺たちの心と身体は壊れていった。
思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描きながら、人間の哀しさや弱さ、そして生きていくことの奇跡を描く。
西加奈子さんの本は、どれも設定が面白くて、最初から引き込まれるものが多い。この本は、1ページ目にアキ・マケライネンという俳優の名前が出てくる。「俺」の友達であるアキがその俳優に似ている、というところから物語がスタートする。誰よそれってなるよね。マケライネンとは、『男たちの朝』という映画に出ているフィンランドの俳優、らしい。超マイナーなんだけど、とにかく友達のアキは彼にそっくりで、そのマケライネンこそが、この本のタイトルの意味にも通じています。
この本で書かれているのは、貧困、過重労働、虐待といった現代の日本に存在する問題。西さんは、当事者でもない自分がこういった問題を書いていいのかすごく悩んだそうです。とてもフィクションだと割り切って読めるような内容ではない、かなり重い。でも本のタイトルからも予想できるように、きちんと、夜は明ける。西加奈子さんの本との出会いは確か『サラバ!』だったかな、サラバもそうだし、この本もそうだけど、とにかく生きる、ということをものすごい熱量で書いている作家さん、というのが個人的な印象。西さんの本を読んでいると、血が沸々として駆け出したくなるような、叫びたくなるような、そんな衝動に駆られる。繊細なことを拾っているんだけど、その表現の仕方がとても男気あるというか、文章の孕むエネルギーがすごい。とても好きな作家さん。
さて、次は、Netflixドラマ「梨泰院クラス」(今更観てごめんなさい)。気になってはいたけど、タイミングを逃して未視聴のままだった、でもようやく観ました!
父親の命を奪われ、復讐を誓う主人公パク・セロイが、居酒屋タンバムを舞台に飲食業界のトップを目指し仲間と奮闘するサクセスストーリー。
というのが簡単なあらすじだけど、まあ色々起こる、なんてたって累計16時間以上ありますからね、単純計算で映画8本分くらいのボリューム。最近8話くらいでまとまったNetflixの韓国ドラマ多いから、16話あるとちょっとひるむんだけど、まあそんな狼狽えも凌駕する面白さ。ストーリーも面白いし、ちょっとしたところがおしゃれで可愛い。
このドラマの見どころは、お金と権力を優先する者と、人と信頼を優先する者(こっちがセロイ)との闘い。主人公セロイは、真面目な男性で、まあ悪く言うとめちゃくちゃ頭が固い。そんな彼に最初は周りもやきもきするんだけど、自分の信念を貫きとおす姿が、周りの意識や行動すらも変えていく。やっぱりね、自分の信念を強く持って生きる人はかっこいい。現実だと真面目な人って揶揄されがちだし、今が楽しければそれでいいじゃん、みたいなちゃらちゃらした人の方が目立つけど、このドラマではとにかく信念!がテーマ。今時こんなことないよ、ってちょっと冷めた目で見てしまう瞬間もあったんだけど、そんな自分を恥じてしまうくらい、セロイのひたむきさはかっこいい。なかなかこんな人には出会えないだろうから、私が私自身のパク・セロイになるしかない(?)。真面目に信念持って頑張りたい。
好きなシーンはたくさんあったんだけど、中でもヒョニという料理長が自身がトランスジェンダーであることをTVで告白するシーンがすごくよかった。最初、それが周りに知られた時に、すごいざわつきが起こってヒョニは逃げ出してしまうんだけど、そこで良いことを言ったのがセロイ。(よすぎてメモした)
お前は お前だから
他人を納得させなくていい
他人を黙らせるために、ヒョニは陰口を言われても厨房に立ち続けようとするんだけど、セロイは他人のために頑張る必要はない、と告げる。逃げてもいい、と。まあ結局ヒョニは表に出るんだけど、すごくいい台詞で、多分ここが一番泣いた。
タンバムというのは、訳すると「甘い夜」。苦しいことばかりの人生だけど、こうやって食事をしたりお酒を飲んだりする時だけは、甘い夜を過ごしたい、という意味が込められてる。今思うと、『夜が明ける』ともリンクしてるな、偶然だけど、なんだか自分へのメッセージな気もして、ちょっと嬉しい。
あ、あと私が翻訳した映画も昨日アップされていたので一応紹介します、
深いこと考えずに気軽に観られるラブコメなので、よかったら。
(今日のタイトル: thought it was/ Iann Dior, Travis Barker&Machine Gun Kelly)
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