midsommar

ずーっと待ってたアリアスター監督の「ミッドサマー」!観てきました!!!


同監督の前作「ヘレディタリー 継承」を観て、この監督いかれてるんじゃないか、と思ったけど、今回で確信しました、いかれてる。いい意味です。



アリアスター監督は、いつも自身の経験を映画にしていて、このミッドサマーは失恋した後に作ったそうです。「皆、死ぬことが一番怖いと思ってるけど、失恋は死より辛いこともある」とインタビューで言ってた通り、ある意味死ぬことよりも怖い恐怖、をこの映画を観ている間ずっと感じる。それは例えば「この喪失感を抱えて一生生きていかないといけないんだ」とかいう絶望だったり。こんな思いするなら死んだ方が楽じゃん、って思う人もいるであろう苦しみを描くのがすごく上手い。だからしんどい。「あなたにとって本当に怖いものってなんですか?」、ってずっと問われてるような感覚になる。






一応ジャンルはホラーで宣伝されてるけど、監督いわく恋愛映画でファンタジー、おとぎ話。私もどちらかというとそう思いました。確かにグロいシーン、ショッキングなシーンはあるけど、救済のストーリーなんじゃないかなと。私は観た後にものすごくすっきりした(笑)あんなにわけのわからない映像を観続け、耳を塞ぎたくなるような呻き声、泣き声を聞いていたにも関わらず。心に溜まっていたやり場のない思いを、主人公ダニーが代わりに声に出してくれて浄化してくれたような気がしました











この映画の怖いところが、まず主人公たちと同じ目線で奇妙な祝祭を見られるところ。主人公のダニーたちは、スウェーデンの奥地で行われる祝祭に「観客」として参加して、村人たちを俯瞰する。だから映画を観てる私たち「観客」もダニーたちと一緒に村を眺めてるような感覚になれる。だから変に映画に没入してしまって、なんとも言えない不安に駆られる。


そして2つ目に、映像がずっと明るいところ。白夜の期間のストーリーだから、夜9時なのに空が明るい。いつ日付が変わったかも分からない。これが怖い。よく「悲しいことの後には嬉しいことが待ってる」とか「光を見るには暗闇を感じなきゃいけないこともある」とか言ったりするし、毎日、昼と夜があるように、何事にも「明」と「暗」があって、それで全ての調和がとれてる。でもこのストーリーには「暗」がない。ずっと同じ「明」。普通ホラーは「暗」なのに、この映画は「明」なのも怖いし、永遠に同じ明るさが続くと人間って気が狂いそうになるんですよね。区切りがわからないし、終わりが見えないから。




こういう風に、「感じたことのない得体の知れない恐怖」を2時間半浴び続けることになります。グロいグロい言われてるけど、まあ確かにそういうシーンはあるんだけど、どちらかというと不安に耐えられるかどうかだと思う。敏感な人は、もう序盤で苦しくなりそう。予告でも出てたけど、人が悲しみのあまり発する呻き声というのかな、泣き喚く声というか、あれは無理な人は無理な気がする。





そしてより不気味さを助長するのが、映像がとにかくおしゃれなところ。これもA24配給の作品なんだけど、色味も綺麗、衣装も可愛い、映像と音の切り替わりもセンスが良い、という具合にフォトジェニックでおしゃれな映画なんですよ、でも気持ち悪い!おしゃれすぎて逆に不気味で怖い!皆頭に花つけて笑顔振りまいてるのに次の瞬間、意味不明な掛け声を発したりするし、何を見てるんだろう、って気分になる。誰かが「やばい薬物をしてトリップした時に見る映像はこんな感じな気がする」って書いてたけど、本当にそれがぴったりの表現かも。。











色々と怯えさせてしまうようなことを書いたけど、ストーリー全体を通して観るとセラピー映画だと私は思いました。(全体を通すとね!途中の映像がしんどいと思う人は観ないで!フリとかじゃなく、本当に気分悪くなる人はなると思う。。)


今までも映画観て前向きになったことはあるけど、ここまで心のしこりが取れた感覚になったのは初めて。すっごいすっきりしたの!(笑)やっぱり悩みとかもやもやを消すにはあれくらいやってくれないとダメなんだ、、その場限りの不安をかき消すために物を割ってみたりするんじゃなくて、根本的に闇から抜け出すにはあれくらいのことが必要なんだ。。ラストちょっと泣いてしまったよ、苦しみから解放された気がして。ダニーに感情移入できると、もうようこそ、って感じ、ストーリーに乗ってエンディングまで向かってください。救いが待ってます。





個人的に一番好きだったのは、村に車で入る時の映像。これからやばいことが起きる、というのを感じさせるカメラワークが天才だった。もし観に行く人がいたらここは私的に一番チェックしてほしい


あまり全員におすすめできる映画ではないけど、気になった方はぜひ。ちなみに好きな人や恋人と行くのは絶対にやめてね






:)