you can't keep talking like this, lips do more than just kiss


子どもの頃に何かにこだわっていた/没頭していた人は、専門的な職業に就くことが多いらしい、とこの前聞いた。私も専門的な仕事をしてるけど、やっぱり思い返せばこだわっていたことがあって(両親のおかげなんだけど)、それが「本」。



童話館という長崎の会社があるんだけど、そこは子どもの年齢に合わせた配本サービスをしていて、毎月本を一冊届けてくれるんです。私と妹は、中学生くらいまでずっとそこから本を注文してもらっていました(それだけじゃ足りず図書館でもめちゃくちゃ借りて読んでた)。小さい頃は母に読み聞かせてもらっていたけど、だんだん自分でも読むようになって、そのおかげで文章を読むことが昔から苦じゃなかった。本から離れた時期もあったけど、でも結局司書資格も取ったし、図書館で一瞬働いたりもしたし、今もまた本をずっと読んでる。


というわけで、ここ1、2ヶ月で読んだ本を何冊か紹介します。









「王妃の帰還」/柚木麻子

(あらすじ)
舞台は私立の女子中学。主人公の範子が密かに「王妃」と読んでいるクラスメイトの滝沢美妃は、「公開裁判」の末、クラスの最上層グループから陥落。最下層にいる範子は、彼女を自分たちのグループに迎え入れ、王妃を再びトップに帰還させるように奮闘する。





私は映画もそうなんだけど、ティーンもの、特にスクールカーストを描いたものがとても好きで、これはまさにそんなお話。

女の子って本当に面倒で、私も中学の時にグループがどうとかでめちゃくちゃ揉めた記憶がある。この本を読んで、「こんな気持ちだったな」、ということを思い出した。

皆で仲良く、が一番いいのは分かってるけど、それが素直にできないのが女の子という生き物で、羨ましいから大嫌い、を繰り返す。むかつく、と言いながら、心の底ではその子に憧れてたり。まあ面倒、でも思い返すとそれすら愛おしい。

この本の登場人物は、皆悩みながらも基本良い子なので、ラストの着地がすごく綺麗。元気がもらえた。


ちなみに作者の柚木麻子さんは、朝井リョウさんと仲が良くて、朝井さんのエッセイの中に、2人で結婚式の余興をする話があるんだけど、それがめちゃくちゃ面白い。いつも2人でイベント内で歌ったり踊ったりできないか、機会を狙っているそう笑。



いつも取り澄ました彼女達の分裂と内部事情をもっともっと聞いて、自分と同じところまで引き下げてしまいたい。日常が遠ざかっていく。やっぱりたまには、これくらいの刺激が欲しい。











「みんな蛍を殺したかった」/木爾 チレン

(あらすじ)
私立女子校に、蛍という美少女が転校してくる。彼女は、オタクの集う生物部に入部し、そこの部員であるスクールカーストの底辺の3人の女の子と仲良くなる。4人は頻繁にメールをする等して仲を深めていくが、そんな中、悲劇が起きる。




これもまたスクールカーストのお話(笑)恩田陸さんの「六番目の小夜子」も美人の転校生が来る設定で、美人は羨ましい、というような描写があったけど、これは更に深く黒い部分を描いてた。



今ってSNSのせいか、容姿主義がますます加速していて、皆ちがって皆いい、と言いながらもやっぱり見た目で判断されてる部分は多い。前にTwitterで、「女性のオリンピック選手は、金メダルをとっても見た目に関して色々言われる。逆にメイクをばっちりしてる選手は、見た目にこだわらず競技に集中しろと言われる。女性はずっと見た目で判断され続けてる」、と書いてる人を見かけたけど本当にそうだなと。女性は少なからず皆感じたことあるであろう苦しみを、木爾チレンさんはこの本の中で書いていました。こういうことって、やっぱりあんまり言いたくないじゃないですか、自分がダメだって認めたくないから。でもそういうのを全部書いていて、苦しかったけど、救われた部分も大きかった。こういうのを感じてるのは私だけじゃないって分かってよかった。


見た目がいい、って得なんだよね、私も見た目が可愛いって理由だけで昨日もロシア人の女の子何人もフォローしたし、インスタは特に顔の世界。もうそういうものなんだって割り切ればいいのかもしれないけど、何で自分はそこにいないんだろうって思わされるものでもある。もちろん、中身も大切で、いくら可愛くてもキャプションに書いてることが、ん?、って思うと、こんな人なんだな〜ってガッカリすることも多い(すごく勝手だけど)、でもそれでも可愛いから許される!って人はたくさんいて、その度に見た目は大きいな、と思わされる。

生きづらいですね、前ほど人と比べてどうこうって思わなくなったけど、でもやっぱりたまに悲しくなることはある




雪は、顔が可愛かったら、幸せになれるって思う?」

もしかしたら蛍は今、幸せではないのだろうか。

でもうちは、今より不幸になったとしても構わないから、蛍のように可愛くなりたいし、可愛く生まれたかった。
一度でいいから、可愛いというだけで、誰かに愛されてみたかった。












「逆ソクラテス」/伊坂幸太郎


短編5編が入った本。ソクラテスの、「自分は何も知らない、って事を知ってるだけ、自分はマシだ」、という言葉をベースとしてそれぞれの物語は進む。



伊坂幸太郎作品では珍しく、すべて小学生が主人公のお話。自分は正しい、この考えがすべてだ、と思っている大人の先入観を逆手にとって子どもたちが奮闘する、だから「逆ソクラテス」。今までの自分じゃ選ばなかったようなものを最近手に取るようにしてる、って前に書いたけど、これも自分の先入観を取り払うため。年を重ねるにつれて自分の中に植え付けられている先入観って強くなるから、そういうのに縛られないようにしないと、と、この本を読んで思った。


伊坂さんの本って、こうだ!って決めつけてる人に対して諭すシーンが多い気がして、それがすごく好き。いいや違うね、こう考えればいいんだよ、って怒鳴るでもなく、ゆっくり相手に伝える。でも逆にそれがすごくどきりとすることが多い。




「ドクロがダサいなんて、そんなの客観的な評価じゃないんだよ」

「客観的ってどういうこと」

「誰が見ても絶対正しいこと、って意味だよ。ドクロマークを恰好いいと感じる人もいれば、ダサいと思う人もいるし。決められることじゃないんだ。正解なんてないんだから。一足す一が二っていうのとは全然違う」


「今まであちこちの学校に通ったけどさ、どこにでもいるんだよ。『それってダサい』とか、『これは恰好悪い』とか、決めつけて偉そうにする奴が」

「そういうものなのかな」

「で、そういう奴らに負けない方法があるんだよ」

「『僕はそうは思わない』」

「え?」

「この台詞」









今は山本文緒さんの「自転しながら公転する」を読んでる。私は今まで自分に近い年齢の主人公の本を読むのが苦手で(現実を直視したくないから笑)、でもこれは勇気出して手に取ってみた。大人って言われる年齢だけど、私はふにゃふにゃしてるからしっかりした大人を見るのが怖くて、でもこの主人公は私とだいぶ似ていた、それもまた悲しいんだけど笑、でもこんなもんなんだろうな、とも思った。


タイトルの「自転しながら公転する」、っていうのは、悩みすぎて頭がぐるぐるしてる主人公に対して恋人が言う言葉なんだけど、すごい言葉だなあ、と思って。地球は秒速465メートルで自転して、その勢いのまま秒速30キロで太陽の周りを公転してる、しかもちょっと傾きながら。だから悩みながら(=傾きながら)、お前はぐるぐる回ってんのな、って言うの。表現がすごく面白くて好き。どういう結末になるのか楽しみです。







私は基本お風呂の中、寝る前に本を読むことが多い(あとはパソコンのソフトが立ち上がる間、ポットのお湯が沸く間とかにも)。細切れ時間を探せば意外と時間ってあるので、忙しくても今後も本は毎日少しずつでも読みたい。またいい本に出会ったら紹介します。



昨日から新しい映画に取りかかってる、火曜まで授業はお休みなのでその間に頑張って進めます!


皆さんも素敵な日曜日を、





(今日のタイトル: lips/The Maine)