ずっと読みたかった「conversations with friends」を(妹に借りて)読んだ。著者は、Sally Rooneyというアイルランドの作家。ミレニアム世代の代弁者、SNS世代のサリンジャー、と呼ばれているらしい彼女、それだけでもう絶対私好きやん、と思って読んだけどやっぱりめちゃくちゃ好きだった。
物語の語り手は、フランシスという21歳の大学生。彼女は高校時代の恋人ボビーと今も親密な関係で、2人で詩のパフォーマンスをしていて、それがきっかけでメリッサというジャーナリストと出会う。しかし、フランシスは彼女の夫ニックに惹かれ、関係を持ち始める。
というのが大まかなあらすじ。これだけ読むと不倫の話なのでは?ってなると思うけど、そんな簡単にひとくくりにはできないっていうのがこの本の面白さ。不倫に対する背徳感が何ちゃら、とかそういう話でもなく、自分という人間、そして自分と周りとの関係を定義づけるものって何なのか、をフランシスは全編とおして探っている。周りが期待する自分、を演じ、こういう自分でいなければならない、という自分で生きている(こういうストーリー大好物すぎる)。
とにかく文体がすごく好きで(原文でも読みたい)、なかでもフランシスが感じている絶望の描き方がよかった。Taylorがall too wellの10 min. versionで、「you said if we had been closer in age, maybe it would have been fine(もっと歳が近ければ上手くいったかもしれないとあなたは言ったけど)、and that made me want to die(それを聞いて私は死にたくなった)」って歌ってて、私この部分が大好きなの、なんでかって言うと、本当に辛い時って死にたい、って思う、というか、その言葉しか当てはまらないような気分、ってある。それを綺麗な言葉で片付ける、ってこと結構あるし、それが悪いってわけじゃないんだけど、本当に苦しい時って本当に死にたくなる。これに似た表現をSally Rooneyもしていて、そこが好きでした。悪態をつく、じゃないけど、飾らない言葉で心の闇を吐露してるのが良い。自分の心にある黒いものって、できれば他人に見せたくなくて、でもそれを表現できる人のほうが私は好きで、直接人に言ったら絶対嫌われるよなこんなこと、っていうのも文章にされてた、そこがサリンジャーの作品と似てるなと思った。自分じゃ止められない渦巻いた気持ち、何でこんなに自分って意地悪なんだろう、って自己嫌悪に苛まれながらも言葉を飲み込めない。私も今日は調子悪くて、久々に落ち込んでるけど(特別な理由はない、でもこれが一番厄介)、でもフランシスのあの冷めた視点と口調、を頭に浮かべれば、彼女が私の気持ちを代弁してくれているようでちょっと心がすっとします。綺麗に生きるのって無理だね、少なくとも私は
(好きな文章たくさんあったので、最後に載せさせてください。)
私の自惚れはいつも厄介だった。学術的な偉業なんてよくても道徳的にまちがっていないという程度のことだと分かってはいるが、私は何か不運がもたさられると、自分の頭の良さを考えて慰みにするのだ。友人ができなかった子供の頃は、自分は全ての教師、この学校にかつて在籍した全ての生徒よりも賢い、一般人に紛れた天才なのだと夢想していた。そう思ってスパイのような気分を味わった。十代になると私はインターネットの掲示板を利用するようになり、アメリカに住む二十六歳の大学院生と交流を深めていった。写真で見る彼は真っ白な歯の持ち主で、私には物理学者の頭脳があると言ってくれた。私は深夜、学校では孤独で、他の女生徒から理解されていないと彼に告白した。恋人がいたらいいのにとも書いた。ある晩、彼は自分の性器の写真を送ってきた。フラッシュをたいた写真には勃起したペニスが右側からのクロースアップで写っていて、まるで健康診断のために撮ったものみたいだった。それから数日間は、自分が病的なインターネットの犯罪を冒して、それがすぐに露見してしまうのではないかという罪悪感と恐怖に苛まれた。私は自分のアカウントを消去して、そこで使っていたメールアドレスも放棄した。起こったことを誰にも打ち明けなかった、打ち明ける相手が誰もいなかったから。(P45)
私があなたにひどいことを言っているとしたら、あなたがそれで傷ついたりなんかしないように見えるからだよ。
そうか、と彼は言った。でもひどいことを言われて喜ぶ奴なんていないと思うね。
でもあなたはそんなことで傷つくタイプじゃないでしょ、ってこと。例えば、あなたが服を試着している姿が思い浮かばない。自分に何が似合うかなんて鏡を見ながら考えるような人だとは思えない。そういうのは恥ずかしいと考えてそう。(P239、240)
今までの人生で、自分が何をやっているのか自分でも分からないって思ったことってある?私は聞いた。
私はこれを見ているんだけど、ボビーは言った。
時々そんな風に思えてくるの、私は言った。ボビーは人差し指をくちびるに当てて言った。フランシス、邪魔しないで。(P248)
殴ってくれる?私は言った。もしも私が頼んだら。
ニックはこちらを見ずに、目を閉じていた。彼は言った。うーん、どうだろう。何でそんなことを?そうして欲しいのか?私も目を閉じて、肺から空気がなくなりお腹がへこんでくるまでゆっくりと息を吐いた。
そう、私は言った。今殴って欲しいの。(P256)
もし私の文章が気に入らないとしても、私は本当に気絶した。嘘じゃないし、今もまだ身体がガタガタ言ってる。愛し合うための新しいモデルを私たち二人で開発するのは可能だと思う?私は酔っ払っているんじゃないよ。お願いだから返事を下さい。愛してる。
フランシスより(P353)
(今日のタイトル:spinning/With Confidence)
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