あらすじを簡単に言うと、天才外科医(ウィレムデフォー)に胎児の脳を移植された女性ベラ(エマストーン)が、ゼロから自分の人生を始めるという物語。赤ん坊だからお皿を好き放題割ったり、食べ物を吐き出したり、でも体は成人女性だからまあ奇妙な画なの。その後だんだん成長して、会話もできるようになったり、はっきり意思表示をするようになったりして、ある瞬間から性に目覚める。快楽を求め、そして世界を見たいという好奇心でマークラファロ演じる弁護士と旅に出るんだけど、この弁護士がクズでね、最初ベラを誘惑した時、彼女の精神年齢って多分13~15歳くらいだったんじゃないかなって思うけど、何も分かってないけど体が魅力的な女性(少女?)を甘い言葉を使って惑わせて、旅先で情事を重ねる。こういうシーンがあるからR18設定、下手にモザイクかけて安っぽい映像になるより潔くて良いんだけど、怖かったんだよねスクリーンでR18指定の映画観るの、半分が性描写とか書いてる人いたし耐えられないかもって思ってたんだけど、半分は言い過ぎ、3割くらい多分、しかも途中から何とも思わなくなる、哀れだなと思って観るようになるので笑。
いろんな場所に旅をするんだけど、ベラはその間もどんどん成長して賢くなって、難しい言葉を使って話し始めたりするから弁護士はイラつき始める。無知でバカな喋り方をしてた時の方が可愛かった、とか言うの、ぶん殴りたかったね笑。最初は快楽のために体を重ねてたベラだったけど、だんだん虚しくなって、旅の中で幸福や快楽以外の感情も知るようになる。自分の体はモノ扱いされていたということに気付いて、自ら娼館で働き始めることを選ぶシーンは最高だった。自分の体に主体性を持っていれば、性でお金を稼いでも良いだろうと。わざわざR指定にして、性描写を描いた理由は全部ここに繋がる、自分の体と意思に主体性を持つ意味を伝えるため。
女性のための映画っぽいけど、もっと大きなものを描いていると思う。でもこれを観た後にでもなおエマストーンの裸が観れて最高でしたとか、逆に全然興奮しない体だったとか書いてる男性をちらほら見かけたので、こんなことを言う人がいるからこんな映画が作られるんだよなあと思った。欲を抑えられないのは当たり前だと口にし、女性をモノのように見て、ああだこうだ意見する人たち。男だから仕方ないとか言うのかな、そんな人がどうなったか映画の中で描かれてたのにな。この映画を観ながら、自分も過去に同じような思いをしたことを思い出した、いつも機嫌を伺って、自分が下に出てた、怒らせることを言わず、相手が望むような格好をして、ただ言いなりになって上手いことやり過ごす。それを自分もどこかで当たり前だと思って生きていたことに気付いてショックだった、言われるがまま大人しく従ってたけど、本当はあの時怒って泣いてよかったんだと思う。そうやって男性も女性も刷り込まれてるものがあって、自分は高潔な思考をしてる、現代らしくいろんな立場の人を理解してると思いながらも、多分誰もできてない、だから今回こうやって胎児の脳からスタートさせるしかなかったんだなと思う、本当に人間って哀れ。まっさらな状態のベラが、その都度男性や社会に疑問を投げかけるシーンは痛快だったし、泣けた。
性描写はまあまあ激しいし、死んだような目で男性に体を委ねてる場面とかもあるのでしんどいし、あと手術シーンもある。私はこれに一番怯えてた、苦手なんだよね、自分の体の中にも同じ臓器があるんだって気づかされるのがリアルで無理なの笑、脳移植シーンはさすがに薄目で観たけど、でも一瞬だしそのシーンを避けるためだけにこの映画を観ないっていうのはもったいなさすぎる。私は文字通り脳みそを入れ替えられたような気分になった。すごい衝撃だった。映像は一秒たりとも無駄がないし、ベラのファッションはとにかく全部可愛い!髪が異様に長いのが気になってたけど、本編観ると理由も分かる。エンドロールも誰も立ち上がれないような作りになってるし、美術的な意味でも素晴らしかった。モノクロからカラーへの切り替わりも感動したし、ファンタジーっぽい家や風景の造りも面白い。いろいろ楽しめます。ウィレムデフォーもめちゃくちゃよかった。万人向けではないし、嫌悪感を抱く人が一定数いるのもわかるけど、大傑作でした私にとって。本当に観てよかったし、こんな映画を作ってくれてありがとうという気持ち。もう誰かの言いなりになったりしたくないし、誰かより下の立場に立ったりもしたくない。嫌われたくないって思いが先に出てくることが今まで何回もあったけど、ちゃんと同じ目線でお互いを見れる人だけ大事にしていきたいし、自分の意思に責任を持ちたい。興味ある人、ぜひスクリーンで。
(今日のタイトル: you're so vain/Pale Waves)
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